
20年以上のナース経験を持つ私が、高血圧と嘔吐の原因や対策をわかりやすく解説します。
さらに無理せず早めに受診する基準や、生活習慣のポイントを紹介します。


記事を読んで、吐き気の原因や対処法を理解し、安心して日々を過ごしていただきたいと思います。
高血圧で嘔吐や吐き気が起こる原因


慢性的な高血圧になると吐き気や嘔吐が起こることがあります。
その原因は大きく分けて2つになります。
筋肉のこり
ストレスや疲れ
肩、首、背中のこりによる嘔吐
血圧が上がると以下の部位にコリを感じることがあります。
- 肩
- 首
- 背中
これは長時間同じ姿勢で過ごすことで血液循環が悪くなり、筋肉が硬くなるためです。
血圧が高いと全身の筋肉や神経が緊張し、気持ち悪くなりやすい傾向があります。
また、慢性高血圧は以下の2種類に分類に分かれています。
本態性高血圧の原因
食べすぎや運動不足
ストレスなどの生活習慣
多くの人がこのタイプに当てはまります。
二次性高血圧 の原因
腎臓の病気
ホルモンの異常
体の中の病気
今回説明している 「体のこり」や「ストレス・疲れ」 は、主に 本態性高血圧 の人に多いですが、 二次性高血圧 の人でも同じように影響を受けることがあります。
ストレスや疲れによる嘔吐・吐き気
ストレスや疲れが続くと血圧が上がりやすく、嘔吐や吐き気を感じることがあります。
以下がストレスが原因の嘔吐・吐き気の流れとなります。
- ストレスや疲れが続く
- 緊張で血管が細くなる
- 胃や腸への血流が低下する
この流れは、交感神経(こうかんしんけい)が優位になった結果です。



交感神経は、「戦うか逃げるか」という緊張状態のときに活発になる神経で、働きすぎると血管が細くなり、心臓がドキドキして、体がこわばるんだよ。
交感神経が優位の状態が長く続くと、胃や腸への血液の流れが減り、吐き気やおなかの不調が起きやすくなるのです。



夜遅くまで起きているなどで自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが崩れると、さらに胃腸の動きが弱まり、気分が悪くなることがあります。
この流れは 交感神経(こうかんしんけい)が強く働く ことで起こります。



血圧が高くて気持ち悪いんです。これって危ない症状ですか?



血圧が急に上がると、肩や首のこり、ストレスの影響で吐き気を感じることがあります。ただ、意識障害や激しい頭痛がある場合は、高血圧脳症の可能性もあるので注意が必要です。
高血圧の吐き気で病院を受診する目安


ここでは、病院に受診すべきか?その目安について説明します。
すぐに病院へ行ったほうがいい場合
血圧が普段より少し高いだけなら様子を見る場合が多いと思います。
しかし、以下の場合は脱水のリスクがあるため受診が必要です。
脱水症状が進むと意識がもうろうとしたり、ふらつきが出現することがあります。
吐き気や嘔吐による脱水からふらついたり意識がもうろうとするのは以下の仕組みになります。
- 体内の水分と電解質(ナトリウムやカリウムなど)が不足
- 脱水により水分が足りないと血液の量も減る
- 全身に送られる酸素や栄養が不足する
- 脳への血流も少なくなる
以上の仕組みから意識がもうろうとしたり、ふらついたりするのです



このような症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。
ちょっと休めばよくなる場合
少しムカムカするだけなら、横になって深呼吸をして気分が落ち着くかどうか確認しましょう。
ストレスや疲れが影響しているなら、静かに過ごす時間をつくると楽になるかもしれません。
具体的には、テレビやスマホを少し切ってリラックスすると、副交感神経が優位になり血圧が安定しやすいです。
また、食べすぎや飲みすぎのあとにおなかが重くなる場合は、無理に動かず、消化を待つのも一つの方法です。



吐き気がして食欲もないんですけど、病院に行ったほうがいいですか?



水分が取れて、強い頭痛や意識がもうろうとする症状がなければ、まずは安静にして様子を見ても大丈夫ですよ。ただ、吐き気が続く場合は受診を考えましょう。
高血圧の嘔吐や吐き気を軽減する方法4つ


食べ物の工夫や運動を取り入れるだけで、血圧の変動が落ち着く場合があります。
ここでは、高血圧の嘔吐や吐き気を軽減するための具体的なポイントを見ていきましょう。
食べるものを工夫する
日ごろの食習慣を少し変えることで高血圧を予防していきましょう
塩分を控える
塩分は水分を体内に貯める働きがあり、その分血圧をあげようと心臓が働いてしまいます。





ナトリウムが多すぎると、スポンジみたいに体が水をため込んじゃうんだ!



水分が増えると血管にかかる圧が上がって、血圧が高くなりやすいです
このことから塩分を控えることは血圧を安定させるうえで大事です。
1日6グラム以下の塩分を目指すと体への負担が少なくなります。
もし、外食が多いなら以下のように塩分を減らす工夫をしてみましょう。
- スープを残す
- ドレッシングらす
このように少しずつ塩分を減らし、塩味に慣れすぎないようにする習慣にしましょう。
野菜や果物を食べる
野菜や果物に含まれるカリウムは体内の余分なナトリウムを排出する働きがあり、血圧の上昇を抑えることが知られています。


また、カリウムには利尿作用を促す面もあり、むくみの予防にも役立ちます。
以下にカリウムを多く含む食品を表にしています。
野菜・果物 | カリウムの量100gあたり(100gあたり) |
---|---|
バナナ キウイ ほうれん草(ゆで) ブロッコリー(ゆで) | アボガド590mg 360mg 300mg 490mg 210mg |



でも高カリウム血症でも吐き気が起こるので取り過ぎには注意です
ストレスを減らす方法
ストレスや緊張は交感神経優位となり血圧が上がりやすく、吐き気も出やすいことを前項でも説明してきました。
精神を安定させることで自律神経が整い、胃や腸の負担を軽くすることができます。
その方法として自宅でも簡単にできる方法をご紹介します


- 深呼吸
- 簡単なストレッチ
- 無理をしない
- 好きな音楽を聴く
- ゆっくりお茶を飲む
- 少し部屋を暗くして目を閉じる
これらのうち、できることから始めてみましょう。
きっと心が落ち着いて血圧の急な変動をおさえることができるでしょう。
適度な運動
適度な運動は血管がしなやかになり、血流がスムーズにします。
その理由は運動によって心臓や血管を取り囲む細胞が刺激され、一酸化窒素という物質が増えるからです。







簡単に始められる方法としては毎日15分程度、軽いウォーキングを習慣にしてみてはいかがでしょうか。
軽い運動を継続することで心肺機能が改善され、血圧が安定しやすい体質になっていきます。
- 体を動かすことでストレスを発散しやすくなる
- ストレスが和らぎ、自律神経が安定
- 血管の収縮が落ち着き、血圧が安定する
以上のようにいいことばかりです。
睡眠を十分にとる
睡眠中は体や脳が休息状態となり、血管も弛緩します。これは十分な睡眠によってストレスホルモンの分泌が抑制され、血管の緊張が緩和されるためです。
具体例として、毎日7時間ほどしっかり眠る人は、そうでない人より血圧が安定しやすいという研究結果もあります。


時間を決めてしっかり睡眠をとる習慣を作るだけでも、体が休まり血圧が安定します。



たまに気持ち悪くなるんですが、日常で気をつけることはありますか?



塩分を控えたり、ストレスを減らすことで血圧の急な上昇を防ぎやすくなりますよ。食後に深呼吸してリラックスするのもおすすめです。
高血圧ではないが嘔吐・吐き気が出る病気4つ


高血圧以外の病気が原因でも嘔吐や吐き気が起こる場合があります。
- 腎臓の病気
- ホルモン異常
- 胃の病気
- 脳の病気
これらの病気はどれも、高血圧以外でも嘔吐や吐き気を引き起こす可能性があります。
症状が長く続いたり、日常生活に支障が出るようなら、早めに医療機関で相談しましょう。
腎臓の病気
腎臓は体の中のゴミ(尿素やクレアチニン)や余分な水分を外に出す大切な場所です
もし腎臓が弱ると、体の中のゴミ(尿素やクレアチニン)がうまく出せなくなり、体にたまってしまいます。
すると血液が汚れたり、体がむくんだりして、気持ち悪くなる場合があります。
このような場合は腎臓の不調がかんがえられるので病院を受診しましょう。
ホルモンの異常
ホルモンは体の中で働く“指令役”のようなものです。
- 甲状腺ホルモンが増えすぎると、胃腸の動きが悪くなるため、吐き気を感じることがある
- 副腎の「コルチゾール」というが足りなくなると、血糖値が下がりすぎたりして、吐き気を感じることがありる
- 副腎の「アルドステロン」が足りなくなると、血圧が下がりめまいやふらつきと一緒に吐き気が出ることがある
- 副腎の「アドレナリン」というホルモンが出すぎると、心臓がドキドキしたり、血圧が急に上がったりして、吐き気がでることがある
ホルモンのバランスが崩れると体がビックリしてしまい、むかむかすることも考えられます。
胃の病気
食べすぎや食べものの消化がうまくいかないと、胃がもたれて気持ち悪くなることがあります。
胃の病気で嘔吐や吐き気が出るケースは以下になります。
- 逆流性食道炎だと、胃の中の酸っぱい液が上がってきて、むかむかしてしまう
- 胃潰瘍になると、胃にキズができてしまい、吐き気や胃の痛みが出やすい
脳の病気
脳の病気でも吐き気が起こることがあります。脳は体の指令センターなので、ここにトラブルがあるといろいろな症状が出やすいです。
例えば、脳腫瘍(のうしゅよう)や脳の血管に問題があると、
- 頭痛
- 嘔吐
- 吐き気
という症状がでる場合があります。



血圧が高いと吐き気が出ると思ってたんですが、他の原因もあるんですか?



はい。腎臓の病気やホルモンの異常、胃の不調なども吐き気を引き起こすことがあります。症状が続くようなら、一度検査を受けると安心ですね。
高血圧と嘔吐・吐き気のよくある質問(FAQ)
少しでも不安を減らし、正しい判断につなげるきっかけになれば幸いです。
- 高血圧で吐き気がしたらすぐ病院に行ったほうがいいの?
-
血圧が普段より大幅に高かったり、水も飲めないほど気持ち悪いときは体が水分不足になりやすく、めまいや立ちくらみを起こすリスクがあります。
- 血圧の薬が原因で気持ち悪くなることはある?
-
血圧を下げる薬の中には、人によっては合わない場合があります。実際に、飲み始めにめまいや吐き気が出る場合があります。
薬が合わないと感じたら、我慢せず症状を主治医に伝えましょう。別の薬に変えたり、量を調整するだけで改善する場合が多いです。
- 妊娠中に高血圧と吐き気があるけど大丈夫?
-
妊娠中は血圧が上がりやすく、つわりの影響もあって吐き気を感じる方が多いです。
ただ、血圧が普段よりかなり高く、頭が痛いと感じるようなら、早めに受診しておくと安心です。
まとめ
高血圧が原因で嘔吐・吐き気の理由と対策について説明してきました。
この記事で紹介した重要なポイントをまとめました。
- 血圧が高い状態が続き、水分補給さえできないほどの吐き気があれば、脱水リスクが高まるため早めの受診が重要
- 食事で塩分を減らす、カリウムを含む野菜や果物をとる、適度な運動と十分な睡眠を心がけると血圧を安定させやすくなる
- ストレスを減らし、交感神経の興奮を抑える工夫も効果的
日常生活の中でこれらを意識しながら、血圧と体調の管理を続けていきましょう。
コメント