
血圧はいつも正常って言われるのに、なんか体がだるい
最近やたらと疲れやすい…
そんなふうに感じることはありませんか?
実はその不調、脈圧(最高血圧と最低血圧の差)が関係している可能性があるんです。



この記事では、経歴20年の現役ナースである私が
・脈圧が小さいと何が問題なのか?
・どんなときに注意すべきなのか?
をやさしく解説します。
まずはそもそも、脈圧とは何なのかから見ていきましょう。


脈圧とは?血圧の差が示す体のサイン


この数値は、心臓から血液を送り出す「勢い」や「血管の柔軟性」を表す、大事な体のサインなんです。
脈圧が示すのは“血管と心臓の元気さ”
脈圧(みゃくあつ)とは、「最高血圧(収縮期血圧)」から「最低血圧(拡張期血圧)」を引いた“差”のことを指します。
脈圧(みゃくあつ)=最高血圧(収縮期血圧)ー最低血圧(拡張期血圧)
たとえば、上が130mmHgで下が90mmHgなら、脈圧は40mmHg。
脈圧が40mmHg前後なら、血管がしなやかで心臓のポンプ機能も保たれているサイン。
反対に30mmHgを下回ると、血流の勢いが弱くなっている可能性があります。
つまり、脈圧はただの「差」ではなく、血管の弾力性や心臓のはたらきを反映した重要なバロメーターなんです。
とくに脈圧が小さい状態は、心臓や血管、あるいは自律神経の異常など、体の奥で起きている不調のサインかもしれません。
ポイント
- 脈圧とは「最高血圧−最低血圧」の差
- 正常な脈圧はおよそ40mmHg前後
- 差が小さいと血流や心臓に負担がかかっている可能性も



収縮期と拡張期の差が30しかないって言われたんですけど…これって大丈夫なんでしょうか?



いわゆる「脈圧が小さい」状態ですね。体に負担がかかっている可能性もあるので、様子を見つつ生活習慣を見直すことが大切ですよ。
脈圧が小さい原因4つ|体の中で何が起きている?



「最高血圧と最低血圧の差が小さい」って、なんとなく不安になりますよね。
この差のことを「脈圧」と呼びますが、実はこの数値、体の状態を知るうえでとても大事なヒントになるんです。
ここでは、脈圧の基本から、なぜ小さいと問題視されるのか、まずはその意味をやさしく解説していきます。
脈圧が小さい状態は、血管や心臓、自律神経の異常によって引き起こされます。
とくに末梢血管の抵抗の増加や心臓のポンプ機能の低下は、血流や血圧のバランスに密接に関わっており、適切な対応が大切です。
末梢血管の抵抗が強い


末梢の血管が収縮して血流が滞る状態になると、心臓が血液を送り出しても全身にスムーズに届かなくなります。
この影響で拡張期血圧(最低血圧)が高めに保たれ、結果として最高血圧との差が小さくなります。



血圧の差が小さいって、体にとってどんな影響があるんですか?



血流が悪い状態が続くと、動脈硬化の進行を促しやすくなるので、早めの対処が大切ですね。
心臓のポンプ機能が低下


心筋の力が低下すると、1回の拍動で送り出される血液量が少なくなり、収縮期血圧(最高血圧)が上がりづらくなります。
その結果、拡張期血圧との差が縮まり、脈圧が小さくなります。
心不全や心筋梗塞の既往がある人、または高齢の方ではこの傾向がより強く出やすく、重症化すると心原性ショックなど深刻な状態に至るケースもあります。
ストレスや自律神経の乱れ


自律神経のバランスが崩れると血管の収縮が過剰になり、拡張期血圧が高くなりやすい状態に。
ストレスや睡眠不足、疲労の蓄積によって若年層でも脈圧が小さくなることがあります。
ポイント
- 緊張や不安などの精神的ストレス
- 過労や多忙などの肉体的負荷
- 睡眠不足や昼夜逆転といった生活リズムの乱れ
加齢による心機能の低下
年齢を重ねると、心臓のポンプ機能や血管の柔軟性が低下しやすくなります。
特に高齢者では、左心室の収縮力が落ちることで収縮期血圧が上がりにくくなり、脈圧が狭くなるケースが多く見られます。
実際に、2021年に発表された高齢者1万人を対象にした日本の疫学調査では、脈圧が30mmHg未満の群は、認知機能のスコアが有意に低い傾向があると報告されています※2。
これは、慢性的な血流不足が脳の機能低下と関係している可能性を示しています。
また、同研究では
と指摘されており、身体の不活発化とも関連づけられています。



最近なんとなく元気が出ない



家事がしんどい
このように感じる高齢者の中には、この脈圧の影響を受けているケースも少なくありません。
脈圧が30と40で違う?体にあらわれる意外な差





脈圧が30mmHgと40mmHgで、そんなに違うの?
と思う方もいるかもしれません。
でも実際は、この“たった10mmHgの差”が、体のすみずみへの血流や酸素供給に影響を与えることがあるんです。
たとえば、脈圧40mmHgの人は、血流がスムーズで頭がスッキリしやすく、集中力や体力を保ちやすい状態。
一方で、脈圧30mmHgを切ると、血流がやや不足気味になり、「疲れがとれにくい」「集中力が続かない」など、日常の小さな不調として現れやすくなります。
日常生活の質を下げる原因にもなるため、注意が必要です。
脈圧が小さい
- 脳への血流不足によるめまい・頭重感・ぼんやり感・冷え
- 酸素が行き届かず疲れやすくなる
- 注意力・集中力の低下で日常生活に支障



たとえるなら、脈圧は家のシャワーの水圧のようなものです。水の勢いが強ければ、全身に行き渡るのも早くてスムーズ。
でも、水圧が弱ければ、髪の毛の奥までしっかり流れませんよね。



もちろん、30mmHgだからといってすぐに病気になるわけではありません。ですが、高齢者や持病のある方では、この10mmHgの差が日常の快適さを左右することがあるのです。
以下は、脈圧が30mmHgの人と40mmHgの人でよく見られる体の違いです。
ポイント
- 脈圧30mmHg以下: 疲れやすく、運動後の回復が遅い。手足の冷えやめまいを感じやすい。
- 脈圧40mmHg前後: 血流が安定し、頭がスッキリしやすく、集中力や体力を保ちやすい。
このように、「たった10の差」と思いがちですが、体が感じる影響は想像以上。特に加齢や既往歴のある方では、この差が体調の変化として表れやすいことがわかっています。
「最近なんとなく疲れやすい」「ぼーっとすることが増えた」と感じる場合、血圧の数値だけでなく、“その差”にも注目してみてください。
脈圧が小さいままだと危険?放っておくとどうなる?


脈圧が小さい状態が続くと、体への負担が積み重なり、深刻な病気を引き起こすリスクがあります。
血液の流れが弱まり、臓器への酸素供給が不十分になることで、心臓や脳の機能に悪影響が出る可能性があります。
特に高齢者や心臓に持病のある人では、注意が必要です。
めまいやふらつきだけでなく、進行すると心不全や脳虚血、認知症といった病気につながることもあります。
実際に、脈圧と心血管リスクの関連は、国内外の研究で多数報告されています。
脈圧が30mmHg以下、または60mmHg以上の状態が続くと、心不全や腎機能低下、動脈硬化などの疾患リスクが高まると指摘されています※1
また、この論文ではアメリカのフラミンガム研究も引用されていて、脈圧の異常は冠動脈疾患(心筋梗塞など)の独立した危険因子になりうるとされています。
ポイント
- 脈圧が30mmHg以下、または60mmHg以上は注意が必要
- 心不全・動脈硬化・腎機能低下との関連が報告されている
- 脈圧の異常は早期発見と生活改善がカギ



脈圧ってそんなに大事な数値だったんですね…。正直、これまで気にしたことなかったです。



そうなんです。血圧の「差」も体の状態を映す鏡なので、気づかずに放置するとリスクが高まるケースもあるんです
どんなときに受診すべき?医師に相談すべき3つのサイン


脈圧が小さい状態が何日も続く場合は、なるべく早めに医療機関を受診しましょう。
特にめまいや息切れ、動悸などの症状があるときは、心臓や血管に異常が隠れている可能性があります。
家庭で測定した記録を持参すると、医師の診断にも役立ちます。
ポイント
- 脈圧が30mmHg未満の日が3日以上続いている
- めまい・息切れ・倦怠感などの症状がある
- 高血圧・心疾患・脳血管疾患の既往がある



病院に行くとしたら、何科に相談すればいいんでしょうか?



まずは内科、特に循環器内科がおすすめです。血圧や心臓、血管の専門的な検査を受けられますよ。
脈圧が改善した人の体感変化


ある60代の女性は、健康診断で脈圧が28mmHgと指摘され、「なんだかいつも疲れる」と感じていました。
生活にウォーキングと減塩食を取り入れ、2か月後には脈圧が35mmHg台に回復。



階段を登っても息が切れにくくなった
夕方のだるさが減った
と実感されています。
脈圧の改善は数値だけでなく、日常生活での体感としても現れてくるものなんです。



たとえるなら、「血流がスムーズ=川の流れが豊か」な状態。
水がしっかり流れていれば、川沿いの草木も元気になりますよね。
血液も同じで、全身にスムーズに行き届けば、体のすみずみが元気を取り戻します。
小さな取り組みが、将来の大きな差につながる。それが脈圧ケアの魅力です。



こんなに違うんですね!血圧の差って正直これまで気にしてなかったです…



そうなんです。見落とされがちですが、脈圧は体のエネルギー循環を支える大事なサインなんですよ。
差を正常に戻すには?日常生活でできる5つの対策


脈圧が小さい状態を改善するためには、日常生活での意識的な対策が重要です。
食事、運動、生活習慣を見直すことで、脈圧を正常に保ち、血流の改善が期待できます。
1. 食事を見直して血流を改善する


血流を改善するためには、食生活が鍵となります。特に減塩を心がけ、野菜や果物、魚類を多く摂取することが推奨されます。
魚に含まれるDHAやEPA、カリウムが豊富な食材は、血管を健康に保ちます。
オメガ3脂肪酸やナッツ類、豆類を取り入れることで、血管の柔軟性を保ち、脈圧を正常に保つ助けとなります。
2. 有酸素運動で心肺機能を強化する


運動は血圧や脈圧に大きな影響を与えるため、心肺機能を強化する有酸素運動が効果的です。
毎日20〜30分のウォーキングやジョギング、サイクリングなどを習慣化することで、血流を促進し、脈圧を安定させることができます。
運動によって血管が拡張し、血液の流れがスムーズになります。長期間続けることで、心臓や血管の健康を保つことができます。
3. ストレス管理と質の良い睡眠を確保する


自律神経のバランスを整えることは、脈圧を正常に保つために不可欠です。
ストレスや不安、過労などが蓄積されると、自律神経の乱れから血圧や脈圧に悪影響を与えます。
ストレスを減らすためには、リラックスする時間を意識的に作り、深呼吸や瞑想、軽いストレッチを取り入れると効果的です。また、質の良い睡眠を確保することも大切です。
睡眠中に体が修復され、血流が改善されるため、良い睡眠習慣を維持するよう心がけましょう。
4. 禁煙と飲酒の見直し


喫煙や過度な飲酒は血管にダメージを与え、脈圧を悪化させる原因となります。
禁煙をすることで、血圧や脈圧が安定し、心血管疾患のリスクも大きく減少します。アルコールは適量を守ることが重要で、過剰摂取は血圧を急激に上昇させるため、控えめにしましょう。
5. 定期的に健康チェックを受ける


定期的な健康診断で脈圧や血圧をチェックし、体調の変化に早期に対応することが大切です。
特に高血圧や糖尿病の既往がある場合は、定期的に医師と相談し、脈圧が正常かどうかを確認しましょう。
忙しい人でも、1日3分だけ“脈圧ケアタイム”を設けるだけでも効果が期待できるでしょう。



たとえば、朝の深呼吸+軽いストレッチ+緑茶1杯。
この3つを毎日続けるだけでも、自律神経が整い、血圧に好影響を与えます。
まとめ|血圧の差が小さいのは体からのSOS
脈圧が小さい状態は、体が何らかの不調を訴えているサインかもしれません。
軽いめまいや疲れやすさだけで済むこともありますが、放置すると心不全や認知症などにつながる可能性もあるため、決して見逃せない指標です。
自宅での血圧チェックを習慣にしつつ、生活習慣を見直していくことが、脈圧を整え、将来の健康リスクを減らす第一歩になります。
ポイント
- 脈圧は「最高血圧−最低血圧」で算出される重要な指標
- 差が小さいときは、血流や心臓に負担がかかっているサイン
- 定期的な記録と生活改善でリスクを軽減できる



最近、血圧の差が前より小さくなってきて心配だったんですが…早めに生活習慣を見直してみます。
それが大事ですね!日々の小さな変化を見逃さず、早めの対応で健康を守っていきましょう。
出典※1:日本腎臓学会誌 第57巻 第8号「脈圧に注目した高齢者の心血管リスク評価」
出典※2Pulse Pressure Is Associated with Rapid Cognitive Decline over 4 Years: A Population-Based Cohort Study:
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